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『貧 血』
血液の中には、赤血球・白血球・血小板の3つの血球がある。赤血球は、体全体(心臓・脳等々)に酸素を運ぶ働きがある。白血球は、体外から入った 菌に対応したり、体内でのいろんな炎症に対応する。血小板は止血に携っている。
その中で、赤血球が少なくなった状態を貧血という。貧血には色んな原因があり、最も多いのは確かに鉄欠乏性貧血だろう。でも、それ以外にも様々な貧血がある。まず、血液はどこで造られるのだろう。骨髄という骨の中で造られる。骨髄は血液の製造工場というところです。この工場が働かなくなった状態では血球が造られなくなる。赤血球・白血球・血小板の3種が造られなくなる状態がある。再生不良性貧血と呼ばれる。工場によそものが入り込んだ状態でも血球を造りにくくなる。癌が骨髄に転移して、骨髄が癌細胞で占拠した場合も血球を造る工場は閉鎖状態になる。骨髄が線維化した場合も骨髄は働かず、血球は造られない。工場に材料が搬入されない場合も貧血になる。
例えば、赤血球の材料に最も大切な材料は鉄であるが生理のある女性は、毎月の生理で出血しており、その結果材料である鉄が無くなってしまい貧血となる。 生理のない更年期以降の女性や男性の鉄欠乏の殆んどが、消化管からの失出である。これらの方が、鉄欠乏を呈したら消化管の検査が必要である。いろんな 潰瘍・ポリープ・憩室・癌等、様々な病気を認める。
もうひとつ、鉄欠乏性貧血、特に小児期の鉄欠乏の中にピロリ菌の感染がある。この場合鉄は十分あるが、それを利用できない状態である。ピロリ菌だけでなく様々な炎症の場合、鉄の利用ができない場合が ある。材料の不足の中には、亜鉛・銅等の不足もあるが、まれである。材料も工場もしっかりしているのにその工場を稼働させる電気や労働力の低下による貧血もある。ビタミンB12、葉酸等の不足でも、その様な事がおこる。
最後に、急激な貧血は出血による失血がる。最も多いのは消化管からの失血。その他は、のうほう内の出血等がある。発作性血色素尿症等、いろんなところからの血液の失血がある。
貧血、貧血、貧血とよく耳にする言葉だが、その原因は多岐にわたる。頭から、鉄材だけを補充すれば良いと考えずに、よく内科医を相談して最も適した 治療を行って下さい。
赤血球は全身に酸素をはこびます。勿論脳ミソにも・・・。貧血が良くなると頭の働きも良くなります。
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『在宅医療及び介護』
先日、家族と介護のスタッフ達とある患者の今後の事を相談した。患者は90歳の女性。肝硬変の診断をされた後、10年程前に紹介されてきた。毎月、患者の顔を見て、元気な姿を確認してきた。
最近ADLが低下し、半年に1回の検査にも難儀を訴える様になってきた。外来での会話は「元気?」「何を食べてる?」「好きな食べものは?」他愛も無い他の人が聴いたらくだらない 会話でしかない。その中で患者の反応やその早さを感じて患者の元気さをみる。会話はそれ自体、勿論大切な情報を集める手段でもあるが会話の内容ではなく、それに対する反応で状態を知る事も大切な事である。
更に、この2~3年この患者の反応が鈍くなってきた。問いにはきちんと応える。内容も間違ってはいない。でも元気がなく反応が鈍い。
先日の定期検査で、膵癌がみつかった。最後の検査を受けるのに、台に移るだけでも辛そうである。画像から膵癌を確定されるには、更に検査が必要で、その検査に耐えられないだろうと家族は言う。僕自身も膵癌が確定したとしても治療にも到底耐えられそうにもないと考える。治療が無理な患者に、検査をするのか? 100%で無くても、ほぼ膵癌に間違いはない。であれば難儀させずに95%の確実の膵癌として、今後ケアをしていこうと会議となった。
生きるという事は何なんだろう。唯単に年を重ねる事なのか。天寿を全うする時をどの様に生きるかという事ではないだろうか?
皆との話し合いの結果、患者本人に苦痛が なく最期迄笑ってすごせる様な体制をとる事にした。美味しいものを食べ、多くの人と楽しく語らい、気持ち良く風呂に入って、毎日を過ごせるように・・・。
そういう気持ちも持った人々が集って会議をした。悦ばれた。
患者の幸せな天寿を迎える為の会議で真剣な話が1時間程続き、本当に疲れた。
でも良かったと、充実した気持ちで1日を終える事ができた。
その後、介護認定を受け在宅での看取りに入った。疼痛をコントロールし、2ヶ月半後長い眠りについた。
西平医院 院長 西平守樹先生