~コロナ禍の健康作り~琉球大学教授 グローバル教育支援機構 保健管理部門 医師 崎間 敦
- はじめに
日本人の約4300万人が該当する最も多い生活習慣病である高血圧は、動脈硬化を引き 起こし、脳卒中、心筋梗塞および心不全などの脳心血管病を引き起こす最大の危険因子と なっています。高血圧を適切に管理することは、健康長寿の延伸に直結することになると いっても過言ではありません。
今回のコラムでは、普段よくご質問を受ける高血圧について、Q&A形式でお答えします。
- Q1.上の血圧と下の血圧の違いは何でしょうか?
図1.上の血圧と下の血圧
心臓は、ポンプのように縮んだり拡がったりして作用することで、血液を大動脈を経由して全身に送り出しています。心臓が収縮すると、まず、血液の約55%が大動脈より先の全身に送られ、残った約45%は大動脈の中にたまります。心臓が収縮したときに動脈にかかる圧力が上の血圧(収縮期血圧)です。ごく短時間で心臓から 全身に血液が送られるため、動脈にかかる圧力が高く なります。
一方、心臓が拡張して血液が末梢から心臓へ戻って くるタイミングでは、血液がたまって拡がっていた大動脈は元のサイズに戻ろうとします。その時に大動脈に たまっていた血液が末梢の血管にまで送られます。 このときに動脈にかかる圧力が下の血圧(拡張期血圧といいます)になります。(図1)
両方の血圧とも大事なのですが、脳心血管病(脳卒中、心筋梗塞など)と血圧の関係でみると、より上の血圧が病気と相関しています。
- Q2.血圧は測るたびに違います。どの数値が本当なのでしょうか?
図2.血圧は変動している
血圧は常に上がったり、下がったり、変動しています。一般には、就寝中の血圧は低く、起きて活動している昼間は高くなります。特に、食事や喫煙、入浴、排泄などでは血圧は上がります。飲酒中は血圧は下がることが多いですが飲酒翌日の特に朝は血圧が上がります。その他、年齢、性別、気温、緊張(面接や人前でしゃべるときなど)、健康状態などによっても血圧は左右されます。(図2)
したがいまして、血圧は測るたびに違う数字が出ますが、その すべては本当の血圧になります。
- Q3.高血圧の基準値は年齢によって異なりますか?
ブラジルのアマゾンのジャングルの原住民はほとんど食塩を摂取しないで生活を営んでいます。
さらに、彼らの食生活は無塩の上にコレステロールや飽和脂肪酸が少なく、食べ過ぎによる肥満もみられません。そして 日中は身体活動の高い生活を送っています。彼らのほとんどは、生涯を通じて正常血圧のままで、加齢とともに血圧が 上がることはありません。
一方、わが国を含めた一般の国では、加齢と共に血圧は上昇します。この加齢に伴う血圧上昇は、主に食塩の摂りすぎと関係していると考えられています。加齢とともに上昇する血圧は、脳卒中や心臓病の原因となります。成人では、病院や 健診機関で測定した血圧値が140/90mmHg以上、かつまたは、自宅で測定した家庭血圧が135/85 mmHgであれば 高血圧の診断となります。高血圧の基準値に年齢による違いはありませんが、血圧管理の目標値(降圧目標)については 年齢により異なっています。一般的な降圧目標については、75歳未満では130/80mmHg未満、一方、75歳以上の高齢者では140/90mmHg未満になります。140/90mmHg以上を超える場合は、血圧の治療をする必要があります。
是非、かかりつけ医へご相談ください。
- ~おわりに~ 今回のコラムでは、普段よくご質問を受ける高血圧についてQ&A形式でお答えしました。
みなさん、自分の血圧を知って健康になりましょう。