健康NEWS 2022年10月 B面 =西平先生の医療雑感=

 

西平先生にお目にかかったのは友人の紹介でしたが、私が健康づくりに関わる当初で、無理に健康づくりの講演をお願いしたことから始まりました。海外での医療従事などインドネシアとの友好を深める親善で、会長の役目も積極的に果しておられることもよく存じております。
先生の飾りっ気のないありのままの率直な『診療雑感』を数回にわたって連載いたします。

下痢の話! 「うんこの話をします!」

― 細からず、太からず、焦げ茶色~黄土色にて長さ1寸~3寸つきたての餅の固さをもって良しとする。―

糞生訓にもし仮に便の話があるとしたら、このような表現になっていたと思います。普通1日1回の排便で遠い人で2~3日に1回、便秘症の人はさらに長い間排便を見ずに過ごす人もいます。
さて!人間に限らず動物は口より物を摂取し、消化、吸収して最終的に尿や弁として排泄しますが、口から入った物を歯で噛み砕きアミラーゼで炭水化物を消化し、胃に入り、胃酸やペプシン等、酵素でもってタンパク質を 分解、胆汁や膵液の助けをかり空腸で吸収されます。脂肪は同じく空腸で吸収されるのですが、脂の玉の様な形でそのままリンパ管へ入りその後血中へと入っていきます。1日に約10リットルの水分が食物としてあるいは 消化液として腸管内に入り再び吸収されていく。小腸で約85%が吸収され残りの15%は大腸で吸収される。従って大腸に入る直前までは便の性状は水性~流動状で横行結腸の中途より下行結腸に入ってから便は固形となる。
このように正常な便をしている時は良いが、これが便秘や下痢となると他人にとっておかしい話でも、本人にとってはこれほど苦しい話もない。わざわざ便を出す為に、あちこちに金を払って下剤を求めたり、漢方薬に  始まり、針、灸に救いを求めるものまで出てきたりする。下剤の場合はほとんどが急性疾患で(中には慢性の経過をとるものもあるが)その時期を過ぎると殆どの人がケロリとしているのが普通である。それでも、その発作と いうか、病っている時は、大の大人がおしめや、場合によってはナプキンを使ったりする。笑うに笑えないおかしな話だ。
ジャカルタに来て、多くの下痢の患者を診てきた。前回にジャカルタでのアメーバー事件を書きましたが、あの話はほんの氷山の一角で、実際にはもっといるだろうというのが自分の印象です。というのは、皆さんにも身に 覚えがあると思うのですがジャカルタあるいはインドネシア在の人達は、「便が柔らかくて、それで当たり前。」という人が多い。本当にそれが当たり前かどうか考えてみたい。

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日本や米国、欧州等、先進国と称する国にTravelle’s diarrhea(旅行者が現地で罹患する下痢症)という病気概念がある。1週間くらいの旅行から、1年、2年の出張まで含め、中南米、東南アジア、アフリカへ旅行した際のその地域特有の原因による下痢をそのように呼んでいる。これらの下痢の多くは、80%~90%は細菌によるもので、腸炎ビブリオ、カンピロバクター等だと言われている。それならば常に抗生剤を飲んでいるといいのかというとそういう訳にもいかない。1週前の短期の旅行に4日も下痢で寝込まれるとどうしようもないのでキノロン系の抗生剤を飲むのは良いかもしれない。

しかし、それが長期になると元来細菌性の下痢自体がSerf‐limited(自然経緯で治癒に至る病気)であったりするのに、無理矢理抗生剤でコントロールすると長期による  副作用の害がある。さらには何回となくバクテリアに感作されているうちに、その免疫ができてくるのだが、その免疫さえできなくなってしまうという事になる。薬を飲み続ける事の繫雑さもあるだろう。細菌性の下痢は判った。それ以外の10~20%は何か?アメーバーであり、Blast Cyais hominus であったりする。これら全て  水系感染であり、手洗いの徹底以外に救える途はないだろう。

平成5年4月に岡山県で行われた日本内科学会で輸入感染症という題でシンポジウムがあり、帰国後発症するアメーバー赤痢が問題となった。無症候性保菌者の多いアメーバー赤痢のこと、何とか帰国前にいない事を確かめたいのだが……。同じ下痢でも、病気の座で下痢の形(?)が異なる。いや、下痢の形態が異なる。消化が悪い場合、消化の場である上部小腸が犯されており、水鉄砲の様な下痢は空・回腸の病気。これが大腸に及ぶと便の中に粘膜や血液を含む事になる。もちろん、重症になれば、以前に赤痢といったように小腸の時でも血液を含む事もある。大腸疾患の代表の潰瘍性大腸炎では粘膜と血液を含みその形態はさしずめ溶けかかったソフトクリームにイチゴシロップをかけたようなもの……。

少々表現が過ぎたようだが。真っ白い便は、便に黄色をつける胆汁が 出ない場合。例えば胆管が石や膵頭部の腫瘍で詰まった等の場合である。真っ黒い便(イカスミの汁の様な)は 上部消化管での出血と相場が決まっている。下痢から話がずれていきそうなので、今回は話をこの辺でうちきっておくことにしよう。尚、便秘の話は次回か!その次か! またの機会……。でも、これから毎日〝うんこ〟の話をしに診療室にくるのは控えめにして……。診療室が臭くならない様に……。

 

西平医院 院長 西平守樹先生

 

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