健康NEWS 2022年 11月 B面 西平先生の医療雑感

最近、日本語がとても難しくなってきた様な気がする。日常診療中のコミュニケーションがなかなかとれずに困っている。何も喋ってくれない人。自分1人で最初から最後まで喋りっぱなしの人。質問と答えが常に食い違っている人。付き添いの人がずっと喋って、本人はうなずくだけの人。小学生のお母さんは、子供に何も喋らせず、ずーっと1人で喋っている。お母さんの声は、まぁ、さておいて!子供の話し声を聞くと、声が嗄れているのか、息苦しくて声がだせないか、喋ると咳き込むのか、がすぐ判る。インドネシアに居て日本語を忘れていないかも判る。
それでは、話を聞いてみる事にしよう。

 

 

◎50歳頃の女性

西平先生  「どうしました?」
50代女性 「実は昨日の夕方、コザへ行きまして飲茶を食べました。エビシューマイの様な物を3個、小さな饅頭を2個ギョーザを1皿、それに……。」
西平先生  ……まだ、食べる気か!……

50代女性 「日本のチマキの様な物を1個食べました。その後コタの汚れた路を駐車場まで歩いて行きました。食事の時には水は怖いので飲み物はティーマニースだけで冷たい物は飲みませんでした。その日は家へ帰って休み
翌日スナヤンへ行ってゴルフをしました。特に調子がいいとか悪いとかいう事もないし、午後2:30頃に  終え、家へ帰りました。宅の車はベンツなんですけどクーラーはあまり身体に良くないと思いクーラーはつけませんでした。途中で横から飛び出した車にぶつけられ、自分の座っている側のドアがおかしくなり、自分はその時は何でもなかったのですが、相手の車には、そのまま逃げられてしまいました。家へ帰った後も頭痛もなければ吐き気もなし、夕食には、ステーキとニンジンのグラッセを食べました。今日になって主人を会社に
送り出した後、何となく心配になり病院に来ました。先生、大丈夫でしょうか……?」
西平先生 「……‼」……あのエビシューマイは何処へ行ってしまったか?……

 

 

◎30歳頃の男性

西平先生 「どうしました?」
30代男性 「風邪です。」
西平先生  ……そうですか、それでは風邪薬をだしましょう…… といって帰す訳にもいかない。再度「どうしました?」

30代男性 「だから風邪です。熱はないけど風邪だと思いますヨ!」
西平先生  ……そりゃ、風邪では必ず熱がなければならないという事もないし……

「咳や鼻水は?」
30代男性 「少しはあるのかなぁー。1週間前にも風邪を引いていて、それが続いているだけですかネ?先生??」
西平先生  ……1週間前にほんとに風邪だったのかどうかもわからないし。ですかね?って言われても。……

「喉が痛いとか、頭が痛いとか、だるいとか、何か症状がありますか?」
30代男性 「少しね。朝ご飯の後にお腹が張る様な気がするんですよネ。これって風邪でしょ?」
西平先生  ……全く困ったものだ!!!…… 一通り診察をし、頭の先から、口の中から、腹……と全身を診て、

「風邪デスね。風邪薬を出しましょう。」となる。
30代男性 「先生、やっぱり風邪でしょう。他の変な病気では無いですよネ!」
西平先生 「……。」

インドネシアでは救急の患者を夜間診る事はないので、酔客を治療する事はない。日常の生活でも、酔客は非常に面白いが、救急室の酔客もとても面白い。 頭から血をダラダラ流して救急室に入ってきた患者。余程美味しい酒を飲んだのか、上機嫌である。酒を飲んでけがをすると、末梢の血管は拡張している為に、その出血量たるや、見ている僕らも驚かされることがある。ダラダラ流れている上に、動き回る為にまともに止血ができない。その酔客の相手も通常酔客である。

〝どうしました?〟おおっと!この時は、問いかけなくてもみりゃーわかる!
〝額がざっくり切れていますので、縫いましょうね!〟〝らいじょうぶー〟〝縫いますよ、いいですね!〟
〝らいじょうぶー〟〝縫う時に痛くない様に麻酔をしましょうね!〟
〝らいじょうぶーらいじょうぶー〟
〝痛くて動かれると困りますので……麻酔を……〟

〝らいじょうぶーから、らいじょうぶ!〟なかなか、いう事を聞いてもらえそうもないので、麻酔はなしで縫うことにして、ひと針をかけたとたん、〝アガーッ〟アルコール麻酔は脳みそには効いてもやはり局所麻酔代わりには使えないのだと、改めて知る。

 

◎問診の出来ない40歳位の男性

〝どうしました?〟〝あの~、なんかどうも変なんです〟〝どういう感じなんですか?〟〝この辺りがなんかつまっているというか、飲み込もうとしても変なんです。〟〝‼〟〝食べ物や飲み水が落ちにくいのですか?〟
〝そうですねぇ、食欲はあるのですよ。〟〝おかしいのは、そのみぞおちのあたりでしょう?〟〝ここなんですよ。ここ!お腹と言うか、食道というか……。その下からは、何ともないみたいでがね。ホラ先生、そうでしょ?〟……攻め方を変えてみるか……

〝熱はありますか?〟〝熱ですかぁ?あると思うんですが、まだ計ってないですヨ!高い熱ではなさそうなんだけど、36℃位ですかね?人間熱がないとおかしいと思いますよ!〟 ……ごもっとも。…… 〝胸やけは?〟〝えー、ありますね。時々、先生もありますでしょ?深酒した翌朝とかに……。〟 ……よけいなお世話だ。……

〝そうですねー。朝、歯磨きをする時は、時々。〟〝体重が落ちてきたという事は、ありませんか?〟〝そうですねー。少し瘦せているんではないですか!〟〝昨年の健康診断の時、何キロありました?〟〝もう忘れましたけど、大学卒業以来68㎏でした。〟〝それで、今は?〟〝そうですねぇー。やっぱり68㎏ですかねぇ。〟〝!!!〟全く困ったもんだ!
一通り診断をして、

〝まぁ~、あまり、どうってことはないのではないかなぁ~、と思いますヨ……!〟
医者の実力もたいしたものではないが、まぁ、こんな会話が日常繰り返されている。

=西平医院 院長 西平守樹先生=

 

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