健康NEWS 2021年10月B面 ~コロナ禍の健康づくり~ 知ろう、自分自身の血圧!

~コロナ禍の健康づくり~ 琉球大学教授 グローバル教育支援機構 保健管理部門 医師 崎間 敦

 

はじめに

2108年に公布された「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」において、高血圧対策は、重点項目のひとつとなっています。

また、新型コロナウイルス(COVID-19)感染の重症化する 患者背景に高血圧があります。高血圧対策は、確実に健康長寿の延伸につながります。そのためには、まず自分自身の血圧を知ることです。

 

そもそも、血圧ってなに?

血圧とは、心臓のポンプ作用で送り出される血液が全身へと流れていく血液の量とと動脈の内側にかかる圧力のことです。シンプルな計算式で表すと    血圧=血液量(心臓から押し出される血液量)×血管抵抗(動脈が収縮して血流が妨げられる ときの血管の内側にかかる圧力)になります。

心臓は、ポンプのように縮んだり拡がったりして作用することで、血液を大動脈を経由して全身に送り出しています(図1)

心臓が収縮すると、まず、血液の約55%が大動脈より先の 全身に送られ、残った薬45%は大動脈の中にためられます。 心臓が収縮したときに動脈にかかる圧力が上の血圧(収縮期血圧)です。ごく短時間で心臓からの血液が全身に送られるため動脈にかかる圧力が高くなります。

一方、心臓が拡張して血液が戻ってくるタイミングでは  血液がたまって拡がっていた大動脈は元のサイズに戻ろうとします。その時に大動脈にたまっていた血液が末梢の血管にまで送られます。このときに動脈にかかる圧力が下の血圧(拡張期血圧といいます)になります。上の血圧も下の血圧も両方重要ですが、心血管病(脳卒中、心筋梗塞など)の関係でみると   より上の血圧が重要視されています。

 

高血圧パラドックス

日本人の約4300万人が該当する最も多い生活習慣病である高血圧は、動脈硬化を引き起こし、脳卒中、心筋梗塞および心不全などの脳心血管病発症の最大のリスクとなっています。よって 高血圧を適切に管理することは、健康長寿の延伸に直結することになります。

しかし、高血圧は特徴的な症状に乏しく、中には無症状の  高血圧方も数多く存在しています。わが国では、高血圧患者数の3100万人が血圧管理不良、このうち、高血圧を認識していない者1400万人、認識しているものの未治療者450万人、治療を 受けているものの管理不良者1250万人と推計されています。

すなわち、多くの高血圧患者が治療を受けていない、治療を 受けていても降圧目標(血圧をどこまで下げるかの目標)を達成していない状況にあります。これは、高血圧パラドックスと呼ばれ、大きな健康および医療の課題となっています。

 

 

  • 測ろう、家庭血圧!

血圧を知るためには、①病院・健診機関などで測る診察室血圧  ②自宅で自分または同居人家族で測る家庭血圧、③病院・医院で  血圧測定機器を上腕に取り付けて、30分または1時間ごとに   24時間自由行動下血圧をモニタリングの3つの方法があります。

一般的には、座位で測定した診察室血圧と家庭血圧が用いられ ます。通常、病院に行くと緊張して血圧が上がることが多いため家庭血圧は診察室血圧より上と下の血圧ともに5mmHg低めです。これまでの研究により、心血管病(脳卒中や心筋梗塞など)の発症を予測するには、診察室血圧よりも家庭血圧の方がより優れていることがわかってきました。すなわち、診察室血圧より家庭血圧の方が正確性と信頼性が高いことを示しています。

家庭で使用可能な自動血圧計は、薬局、家電販売店、通信販売などで購入できます。市販の自動血圧計は大きく3タイプあります。上腕に巻くもの(上腕型)、手首に巻くもの(手首型)、指に巻く  もの(指型)です。一般的には、上腕型が最も正確とされています。また、機器の操作しやすい、表示された血圧や脈拍の数字が読みやすい、カフ(腕などに巻く布の部分)が巻きやすいなど、実際に  自分で操作してみて、一番使いやすいものを選ぶとよいです。

(表1)に家庭で血圧を測る注意点をまとめます。血圧は常に 変動しています。1日に何度も測定し、その値に一喜一憂する  必要はありません。家庭血圧の測定期間はできるだけ長い期間が 望ましいです。一般的には、家庭血圧の1週間の平均値(朝および晩、別々に計算します)を診断に用います。

診察室血圧が140/90mmHg以上を高血圧の診断基準として 用いますが、家庭血圧は診察室血圧よりも一般に低めであることから、家庭血圧は135/85mmHg以上を高血圧の診断基準としています。診察室血圧が140/90mmHg未満でも家庭血圧が135/85mmHg以上の場合は仮面高血圧と呼ばれています。仮面血圧は、脳心血管病(脳卒中、心筋梗塞など)のリスクが高くなる  ことから、きちっとした管理が必要となります。

 

 

表1.家庭血圧測定のポイント

  • 起床後1時間以内の、朝食前、または寝る前に
  • 静かで適当な室温の部屋で
  • 血圧の薬を服用する前に
  • トイレはすませてから
  • 少しゆったりとしてから
  • 座って正しい姿勢で
  • 左右どちらか決まったほうの腕で
  • カフは心臓の高さに
  • 一度に測定するのは1~2回程度
  • 長期続けることが大事
  • 記録をつける

(測定日時、朝か夕か、体調などもあわせて)

 

 

  • おわりに

高血圧は放置しておくと動脈硬化が進展し、脳心血管病で命を落とすリスクの高い怖い病気です。高血圧対策は確実に健康長寿の延伸につながりますので、まず、自分自身の血圧を知ること  からはじめてください。家庭血圧が135/85mmHg以上が続くようでしたら、是非、かかりつけ医へご相談ください。

 

 

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